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中学生が自分の気持ちを言葉にする練習と語彙を増やすメモの取り方

感想文で「楽しかった」「すごかった」ばかりになる原因を、感情を細かく言いかえる語彙メモの作り方で整理します。1日3語のペースで気持ちを表す言葉を増やしていく具体的な手順を確認できます。
目次
感想文の原稿用紙に向かっても、出てくる言葉は「楽しかった」「悲しかった」「すごかった」の3つだけ。本を読んだあとには胸の中にいろんな気持ちがふくらんでいたはずなのに、いざ書こうとすると同じ言葉ばかりが並んでしまい、原稿用紙の3行目で手が止まる。日記もスピーチ原稿も、毎日同じ語尾でしめくくられて、見返したときに昨日との区別がつかない。中学校に上がった頃から、こうした「気持ちを言葉にできないもどかしさ」を感じる人は少なくありません。
気持ちを言葉にする力は、生まれつきの才能ではなく、毎日3語ずつでも書きためていく「メモの習慣」で少しずつ育っていくものです。「楽しかった」を「胸がはずんだ」「もう一度味わいたい」と言いかえるための引き出しは、1日3つずつ増やせば、半年で500語以上の手元在庫になります。この記事では、気持ちと出来事を分けて考える基本、感情を大きく4つに分類する見取り図、「うれしい」「悲しい」「いらだち」を細かく言いかえる練習、1日3語の語彙メモの書き方、感想文・作文での応用までを順に紹介します。
結論:1日3語の語彙メモで言いかえの引き出しを増やす
- 気持ちを言葉にする力は才能ではなく、1日3語ずつ書きためるメモの習慣で少しずつ育ちます。
- 気持ちと出来事は別のものと考え、出来事を1文、気持ちを1文に分けて書くと厚みが出ます。
- うれしさ・悲しさなどを強さや向きで細かく言いかえ、体の感覚を借りて書く方法もあります。
- 感想文では「楽しかった」に言いかえを重ね、気持ちが生まれた場面を1つ添えて書きます。
気持ちを言葉にできないと困る場面
気持ちを言葉にするのが苦手なままでいると、いろいろな場面で小さな不便が積み上がっていきます。感想文・作文・スピーチでは、原稿用紙の3行目あたりから書くことが見つからなくなります。日記をつけても、毎日同じ言葉ばかり並んでしまい、見返したときに今日と昨日の区別がつきません。友達とのやり取りでは、「今日の体育、楽しかったね」「うん、楽しかった」だけで会話が終わってしまい、せっかくの出来事が記憶に残りにくくなります。
気持ちと出来事は別々のもの
感想文や作文で気持ちが書けないとき、「気持ち」と「出来事」を頭の中で分けると、書きやすくなります。出来事は「外で何が起きたか」、気持ちは「その出来事を見て、自分の中で何が動いたか」のことです。たとえば「文化祭でクラス全員が舞台に立った」は出来事、「その光景を客席で見たとき、胸のあたりが熱くなった」は気持ち。出来事を1文、気持ちを1文と分けて書くだけで、文章に厚みが出てきます。
感情を分類する表
気持ちを細かく言いかえる前に、まずは大きな分類をつかんでおくと、メモを取りやすくなります。中学校段階では、むずかしい理論を知る必要はありません。日本語でよく使う気持ちを、おおまかに4つにまとめておくだけで十分です。
大きな気持ち | 代表的な言葉 | 出やすい場面 |
|---|---|---|
うれしさ | 楽しい・うれしい・心強い・ほこらしい | 目標を達成した・友達に認められた |
悲しさ | 悲しい・さみしい・つらい・むなしい | 別れがあった・期待が外れた |
いらだち | むかつく・もどかしい・くやしい・腹立たしい | 思い通りにならない・誤解された |
おどろき | びっくりした・はっとした・あぜんとする・目を見はる | 予想外の出来事・初めての場面 |
1つの気持ちには「強さ」と「向き」がある
同じ「うれしさ」でも、強さや向きはさまざまです。たとえば、テストで90点を取ったうれしさ、友達が困っているときに自分が助けられたうれしさ、ライバルだったクラスメイトの活躍を聞いたうれしさは、形がちがいます。気持ちを言葉にするときは、「だれに対しての気持ちか」「強さはどのくらいか」を一緒に考えると、似た言葉の中から自分にぴったり来るものを選びやすくなります。
「うれしい」「悲しい」「いらだち」を細かく言いかえる
大きな分類のあとは、それぞれの気持ちを細かく言いかえる練習です。同じ「うれしい」でも、誰に対するうれしさか、どのくらいの強さかで、ぴったり来る言葉はかなり変わります。下の表は、半年ほど書きためると集まる言いかえの例です。
ふだん使う言葉 | 言いかえの候補 | 使い分けのヒント |
|---|---|---|
うれしい | 心がはずむ・ほこらしい・心強い・じんとくる | はずむ=楽しい予感/じんとくる=静かなうれしさ |
楽しい | わくわくする・心がおどる・もう一度味わいたい | 体が動きそうなときは「わくわく」 |
悲しい | 胸がしめつけられる・むなしい・さみしい・気落ちする | しめつけ=強い悲しみ/さみしい=静かな悲しみ |
むかつく | もどかしい・くやしい・納得がいかない・腹立たしい | 原因が自分なら「もどかしい」/相手なら「腹立たしい」 |
すごい | 思わず息をのむ・目を見はる・ためになる・心を打たれる | 体の反応で言いかえる |
こわい | 不安だ・ためらう・気おくれする・身構える | 相手や場面によって強さを変える |
体の感覚を借りて言いかえる
気持ちの言葉が出てこないときは、体の感覚を借りる方法もおすすめです。「うれしい」が出てこないときは「胸が温かくなった」「自然に口角が上がった」、「悲しい」が出てこないときは「のどがつまった」「足が止まった」と書きます。気持ちそのものを名前で呼ぶよりも、体に起きた変化をそのまま書くほうが、読み手にも伝わりやすくなることがあります。
1日3語の語彙メモ
「気持ち言葉ノート」は、1日に3語だけ書く小さなメモです。短いからこそ続きやすく、半年で500語以上の言いかえが手元にたまります。書き方は次のとおりです。
今日いちばん心が動いた出来事を1行で書く。
そのときの気持ちを、ふだん使う言葉で1語だけ書く
(例:楽しかった)。
その言葉を、もう少し細かい3語に分けて書きかえる
(例:胸がはずんだ・笑いが止まらなかった・もう一度味わいたい)。
朝起きてから寝るまでの3場面ぶん、これをくり返す。
週末に見返して、自分が使いそうな言葉に下線を引く。
メモは「書きやすさ」を優先する
気持ち言葉ノートは、きれいに書く必要はありません。小さな手帳に、寝る前の3分だけ書きこむ形がおすすめです。1日3語と決まっているので、書きすぎることもなく、書きすぎないからこそ続きます。週末にまとめて読み返すと、自分のなかで「最近こういう気持ちが多いな」「この言葉、もう少し使ってみよう」という発見が出てきます。
作文・感想文での応用
気持ち言葉ノートが少したまってくると、作文や感想文の書き方が変わります。原稿用紙に「楽しかった」と書いたあとに、ノートを開いて、その日の出来事に合う言いかえを1つ選んで重ねるのです。たとえば、文化祭の感想文を次のように書きかえられます。
- 書きかえ前:文化祭の合唱はすごかったです。とても楽しかったです。
- 書きかえ後:文化祭の合唱では、最後のサビでクラス全員の声が一つになり、客席まで響くのが分かりました。歌い終わったとき、胸の奥が温かくなって、もう一度この時間を味わいたいと思いました。
- 書きかえ前:先生にしかられて、悲しかったです。
- 書きかえ後:先生にしかられた帰り道、いつもの通学路がやけに長く感じました。家に着くまで、何度も「あのとき、ちがう言い方ができたかな」とくり返し考えていました。
- 書きかえ前:友達とけんかしたあと、むかついていました。
- 書きかえ後:友達と言い合いになったあと、頭よりも先に手のひらが熱くなりました。教室を出てしばらく、自分の言い方にもどかしさが残っていました。
気持ちは「説明」より「場面」で書く
感想文や作文で気持ちを書くときのコツは、「うれしかった」「悲しかった」と説明するだけで終わらせず、その気持ちが生まれた小さな場面を1つだけ添えることです。場面を添えると、読み手の頭の中にも同じ景色が浮かびます。「いつもの通学路がやけに長く感じました」のように、特別な言葉でなくても、場面と気持ちのつながりがあれば、文章は十分伝わります。
やりがちなまちがいと気をつけ方
気持ちの言葉を増やしていくと、ときどき「カッコよく見せたい」気持ちが出てきて、書きすぎてしまうことがあります。次の表は、書きすぎ・書き足りなさのよくある例をまとめたものです。
よくあるまちがい | 何がまずいか | 気をつけ方 |
|---|---|---|
気持ちの言葉を10語並べる | 読み手が追いつかなくなる | 1段落に気持ちは1〜2語に絞る |
難しい言葉ばかり使う | 自分の感覚と合っていない | ふだん話す言葉に1語だけ重ねる |
気持ちだけ書いて場面がない | 読み手に景色が伝わらない | 場面を1つだけ添える |
出来事ばかりで気持ちがない | 日記のような事実羅列になる | 出来事1文に気持ち1文を組ませる |
コピペで使える感情語彙集
感想文や日記で「楽しかった」「悲しかった」だけになってしまうときに、机のそばに置いておけるよう、主要な感情ごとに「弱い・ふつう・強い」の3段階で言いかえの候補を並べました。気持ちは強さによってぴったり来る言葉がちがいます。下の表を見て、自分のいまの気持ちにいちばん近いマスの中から、ひとつだけ選んで書いてみてください。同じ感情でも、強さを書き分けられると、文章の手ざわりが少しずつ豊かになっていきます。
感情 | 弱い | ふつう | 強い |
|---|---|---|---|
うれしい | ほっとする・心がほぐれる | うれしい・心がはずむ・ほこらしい | 胸が熱くなる・じんとくる・心がふるえる |
悲しい | さみしい・気落ちする | 悲しい・つらい・むなしい | 胸がしめつけられる・打ちのめされる・涙が止まらない |
いらだち | もどかしい・引っかかる | くやしい・むかつく・納得がいかない | 腹立たしい・はらわたが煮える・どうしてもゆるせない |
不安 | 気になる・落ちつかない | 不安だ・心配だ・ためらう | 胸さわぎがする・足がすくむ・気が気でない |
期待 | 楽しみだ・待ち遠しい | わくわくする・心がおどる・待ちきれない | 胸がおどる・じっとしていられない・もう一度味わいたい |
おどろき | おやと思う・はっとする | びっくりする・目を見はる | 息をのむ・あぜんとする・心を打たれる |
よくある疑問
言葉が出てこないときは、どうすればいいですか。
体の感覚から書き出すのが近道です。「胸が」「のどが」「足が」など、体の場所と動きをつなげる練習をすると、気持ちを言葉にする入口が見つかります。
ノートは紙とスマホのどちらがよいですか。
どちらでも続くほうで大丈夫です。すきま時間に書き足したいならスマホ、寝る前にゆっくり書きたいなら紙のノートがおすすめです。
友達との会話でも気持ちの言葉は増やせますか。
増やせます。「楽しかったね」のあとに、「とくにあの場面で胸がはずんだよ」と一言だけ添える練習をすると、相手にも自分の気持ちが伝わりやすくなります。
つらい気持ちまでメモするのはきつくないですか。
無理にすべてを書く必要はありません。書きたくない日は1語だけ、「今日はつらかった」とだけ書いて閉じる。書き続けることよりも、自分を疲れさせないことが大切です。
小さな引き出しが、ひとつずつ増えていく
「楽しかった」しか書けない夜でも、心の中の気持ちは、けっして3つだけではありません。ただ、それを呼び出す言葉がまだ手元にないだけです。半年かけて書きためる小さなノートは、1ページにつき3つの引き出しを増やす作業です。書きためた引き出しは、感想文の中だけでなく、友達との会話・日記・将来書くことになるさまざまな文章のなかで、いつでも開けるようになります。
明日からの一手は、今日寝る前に「気持ち言葉ノート」を1冊用意して、最初のページに1日3語だけ書いてみることです。書き始めの一語が出てこないときは、読書感想文の書き方 を一度読み返してから始めると、出来事と気持ちをセットで書くコツがつかみやすくなります。書きためた引き出しは、3年生になっても、高校生になっても、ずっと自分の役に立ち続けます。
