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10項目
俳句を作ろうとして、原こう用紙の前で手が止まってしまうことはありませんか。「五・七・五の十七音で、季語(きご)を一つ入れる」というルールは知っていても、いざ書こうとすると、海も山も花火も思いうかんで、どうやって十七音にまとめればよいか分からなくなってしまいます。
たった十七音しかないのに、その短さがかえってむずかしさにつながってしまうのが、俳句作りの最初のかべです。
俳句作りのヒントは、むかしの人が作った句の中にあります。江戸時代の松尾芭蕉(まつおばしょう)の「古池や 蛙(かわず)飛びこむ 水のおと」は、たった十七音で、しずかな池の場面が目の前にうかぶ作品です。短いくぎりの中に景色をぎゅっとつめこむのが俳句のおもしろさです。
結論:身近な場面と季語を一つ決め、五・七・五に当てはめて読み比べる
- 俳句は五・七・五の十七音で作る短い詩で、文字の数ではなく音の数で数えるのが基本です。
- 季語はその俳句の季節を表す言葉で、ふつうは一句に一つ入れます。まよったときは、国語のじてんや俳句の本で確かめます。
- 小さい「っ」やのばす音「ー」は一音、小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」は前の文字とあわせて一音と数えます。
- 最初に思いついた言葉がいちばんよいとはかぎらないので、言葉を入れかえて声に出して読み比べます。
俳句は五・七・五の十七音
俳句は、日本に古くからあるみじかい詩のひとつです。五つの音、七つの音、五つの音の三つの部分で作られていて、ぜんぶで十七音になります。たった十七音しかないけれど、その中にきせつの感じや、見たもの、心が動いた場面をぎゅっとつめこむのが俳句のおもしろさです。
五・七・五の音は、文字の数ではなく「音の数」で数えます。たとえば「ふるいけや」は、ふ・る・い・け・やで五音です。「かわずとびこむ」は、か・わ・ず・と・び・こ・むで七音。「みずのおと」は、み・ず・の・お・とで五音。あわせて十七音になります。一文字一音で数えると、ほとんどの場合はうまくいきます。
俳句の三つの部分 | 音の数 | 例 |
|---|---|---|
上の句(かみのく) | 五音 | ふるいけや |
中の句(なかのく) | 七音 | かわずとびこむ |
下の句(しものく) | 五音 | みずのおと |
季語は季節を表す言葉
俳句のもう一つの大きなルールは、「季語」を一つ入れることです。季語とは、その俳句がどの季節のことを書いているかを表す言葉です。たとえば「桜」と書けば春、「せみ」と書けば夏、「もみじ」と書けば秋、「雪」と書けば冬を表します。季語が入ると、十七音の中にきせつの空気感が一気に広がります。
季語は、自然の中にたくさんあります。まず季節ごとの代表的な季語をいくつか見わたして、その中から自分の作りたい俳句に合いそうな言葉をえらびます。「すいか」や「花火」は夏の言葉に思えますが、季語を集めた本(歳時記)の中には、秋の季語としてあつかうものもあります。
季節 | 代表的な季語 |
|---|---|
春 | さくら、つばめ、菜の花、ひな祭り、春風、つばき |
夏 | せみ、夕立、ひまわり、ほたる、かき氷 |
秋 | もみじ、月、すずむし、いね、コスモス |
冬 | 雪、こたつ、みかん、こがらし、つらら、白い息 |
たとえば、夏休みに海でひろった貝がらのことを書きたいとき、季語は「貝がら」ではなく「夏の海」にします。「貝がら」は季語にふくまれず、「海」もそれだけでは季節が決まらないので、「夏」をそえるのです。季語にまよったときは、国語のじてんや俳句の本で確かめると安心です。
音の数え方と小さい「っ」「ゃ」の数え方
音を数えるとき、小学生がよくつまずくのが、小さい「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」と「ー」(のばす音)の数え方です。これらにはルールがあって、覚えておくと音の数え方で迷いにくくなります。
- ふつうのひらがな:一文字で一音(例:「うみ」は、う・みで二音)
- 小さい「っ」:一音と数える(例:「らっぱ」は、ら・っ・ぱで三音)
- 小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」:前の文字とあわせて一音(例:「きょうしつ」は、きょ・う・し・つで四音)
- のばす音「ー」:一音と数える(例:「ラーメン」は、ラ・ー・メ・ンで四音)
- 「ん」:一音と数える(例:「みかん」は、み・か・んで三音)
たとえば、夏の季語「きゅうり」を使って「きゅうり食べた 空のおひさま 白い雲」という句を作ったとします。これを数えてみると、上の句「きゅうりたべた」は、きゅ・う・り・た・べ・たで六音です。
小さい「ゅ」は前の「き」とあわせて一音なので、「き・ゅ」と二つに分けて数えないように気をつけます。五音より一音多いので、六音のまま「字あまり」とするか、「きゅうりもぐ」(きゅ・う・り・も・ぐで五音)のように別の言葉に入れかえるかを考えます。
身近な場面から題材を選ぶ
俳句の題ざいは、とおくのきれいな場所や、めずらしい出来事でなくてかまいません。むしろ、身近な日じょうの中の小さな場面のほうが、自分の言葉でいきいきと書けます。むかしの俳人たちも、家のまわりの池、つくえの上のすずり、台所のにおいなど、ふだんの場面を俳句にしてきました。
- 朝の場面:登校とちゅうで見た景色、家族との会話、お弁当のにおい
- 学校の場面:そうじ時間、休み時間、給食、運動場の風
- 夕方の場面:夕やけ、せみの声、夕食のしたく、お風ろの時間
- 休日の場面:家ぞくとの外出、ペットとのおもいで、買い物のとちゅう
夏休みに海でひろった貝がらを、机のひきだしにしまっている。ひきだしを開けると、海のにおいがほんの少し残っているような気がする。そんな場面を俳句にすると、「ひきだしに 夏の海あり 貝のおと」のようになります。声に出して読んでみると、場面がうかぶかどうかを自分で確かめられます。
言葉を入れかえて読み比べる
俳句作りでいちばん楽しいのが、言葉を入れかえて読み比べる時間です。同じ場面でも、えらぶ言葉によって、心にひびく感じがぜんぜんちがってきます。
最初に思いついた言葉が、いつもいちばんよいとはかぎりません。何回もちがう言葉で書いてみて、声に出して読み比べてみると、自分のいちばん気に入る一句がしだいに見えてきます。
もとの句 | 入れかえた句 | 感じのちがい |
|---|---|---|
ひきだしに 夏の海あり 貝のおと | ひきだしに 夏の音あり 貝の白 | 音から色へ、感じがしずかになる |
ひきだしに 夏の海あり 貝のおと | ひきだしに 海のおと聞く 夏の朝 | 場面の時間がはっきりする |
ひきだしに 夏の海あり 貝のおと | 机の上 夏の海あり 貝のおと | 場所がかわると景色もかわる(上の句「机の上」は、つ・く・え・の・う・え で六音の字あまり) |
作った三つの句をならべて、声に出して読んでみましょう。家の人にも読んでもらい、どの句がいちばん場面をうかべやすいかを聞いてみます。何度も読み比べると、「ここをかえると、もっと自分の気持ちに近くなる」というところを、自分で確かめられます。
俳句を作る手順
一句目をどこから書き始めればよいか分からないときは、季語と場面の組み合わせを先に決めてしまうのが近道です。下の手順に沿ってうめていけば、五・七・五の形がしぜんに整います。
- 手順1 季語を一つえらぶ:春なら「さくら」、夏なら「せみ」のように、季節を表す言葉を一つ決める
- 手順2 場面を一つえらぶ:その季語に合う身近な場面(家の中、通学路、教室、公園など)を一つにしぼる
- 手順3 上の句(五音)を決める:場所や時間を表す言葉から始めると、五音にまとめやすい
- 手順4 中の句(七音)を作る:見たもの・聞いたもの・した動作を、七音に当てはめる
- 手順5 下の句(五音)で結ぶ:季語や、いちばん心が動いたものを、五音で言いきる
- 手順6 声に出して読み比べる:いくつかの形を作って、家族や友だちに読んでもらう
季語とリズムを味わう名句
自分で作る前に、よく知られている江戸時代の句を声に出して読むと、十七音のリズムが体にしみこんでいきます。下の四句は、作った人と季語をそえて紹介します。これは味わうための句なので、自分の俳句としては使えません。どの言葉で場面が見えるのかをたしかめる手本として読んでみてください。
作った人 | 句 | 季語と季節 |
|---|---|---|
松尾芭蕉 | 「古池や 蛙飛びこむ 水のおと」 | 季語:蛙、春 |
松尾芭蕉 | 「閑(しずか)さや 岩にしみ入る 蝉(せみ)の声」 | 季語:蝉、夏 |
与謝蕪村 | 「菜の花や 月は東に 日は西に」 | 季語:菜の花、春 |
小林一茶 | 「やせ蛙 まけるな一茶 これにあり」 | 季語:蛙、春 |
やってみよう(三つのステップで一句作る)
- ステップ1:身近な場面の中から、心が一しゅん動いた場めんを一つえらぶ
- ステップ2:その場めんに合う季語を、季節ごとの表から一つえらぶ
- ステップ3:見たもの・聞いたもの・感じたものを、五・七・五に当てはめてみる
- ステップ4:できた句を声に出して読み、言葉をいくつかちがうものに入れかえて読み比べる
- ステップ5:自分がいちばん気に入った形を、ノートに清書する
俳句はむずかしそうに見えますが、ルールは「五・七・五」と「季語を一つ入れる」の二つだけです。最初はうまくいかなくても、何度も作ってみることが、五・七・五のリズムにふれる練習になります。
学校で習った松尾芭蕉や与謝蕪村(よさぶそん)、小林一茶(こばやしいっさ)のような江戸時代の俳人たちの句を、声に出して何度か読んでみるのも、よいれんしゅうになります。読んだあとで、「自分ならどんな景色を俳句にするだろう」と考えてみると、新しいアイデアが生まれてきます。
俳句づくりのよくある疑問
五・七・五から音がずれたらダメですか。
一音くらいなら「字あまり」「字たらず」とよばれて、俳句として通じます。ただし、できるだけ十七音にそろえるほうがリズムがよくなります。
季語が入らない俳句はダメですか。
季語が入らないものは「無季俳句」とよばれて、こちらも俳句のなかまです。ただし、学校の宿題では季語を入れるように言われることが多いので、ふつうは入れて作ります。
季語が二つ入ってもいいですか。
ふつうは一句に一つだけ入れます。季語が二つだと、どの季節の俳句なのかがぼやけてしまいます。
上の句、中の句、下の句のじゅん番は決まっていますか。
五・七・五のじゅんが基本です。ただし「字あまり」「字たらず」のように、少しくずす形もあります。学校では基本のじゅんで作りましょう。
