目次
意見文とは、あるテーマに対して「自分はこう考える」という立場を、相手を説得する形で書く文章のことです。読んで感じたことを自由に書く感想文とは、目的も書き方も別物として整理されています。中学生が意見文の課題で最初に迷うのは、書き始めから「便利だと思います」「みんなも持っています」と感想文寄りの文章になってしまい、自分の主張がどこにあるのかぼやけてしまうことです。意見文を書ける状態にするには、まず感想文との境界線をはっきりさせる必要があります。
意見文は、「主張・理由・根拠・反論への応答」の4つの部品で組み立てられます。主張を一行で言い切り、理由でなぜそう考えるかを示し、根拠(体験・データ・引用)で理由を支え、反論への応答で反対意見にも向き合う。この4つが入っていれば、原稿は「考えている文章」に変わります。この記事で整理するのは、感想文と意見文の違い、主張を一文に絞る方法、根拠の3種類の使い分け、反論への応答の入れ方、提出前の論理チェックの5つです。
結論:「主張・理由・根拠・反論への応答」で組む
- 感想文は自分の気持ちを表す文章、意見文は相手を説得する文章として、目的から書き分けます。
- 主張は一文に絞り、「私は〜と考える」「〜すべきだ」と弱めずに言い切る形にします。
- 根拠は体験・データ・引用の三種から選び、数の多さより主張とのつながりの強さを優先します。
- 反論への応答を一段落入れると、反対意見にも向き合う「考えている文章」に変わります。
感想文と意見文の違い
感想文と意見文は、似ているようでまったく別の文章です。感想文は「読んで・見て・体験して、自分がどう感じたか」を書く文章で、意見文は「ある話題に対して、自分がどう考えるか」を、相手を説得する形で書く文章です。読書感想文の書き方そのものは読書感想文の書き方 で整理しているので、感想文の方を確認したい場合はそちらをご覧ください。
観点 | 感想文 | 意見文 |
|---|---|---|
目的 | 自分の気持ちを表す | 相手を説得する |
主役 | 「私」の感情 | 「主張」とその根拠 |
書き出し | 出会いや印象 | 主張の一文 |
構成 | 時系列が多い | 主張→理由→根拠→反論への応答 |
結論 | 心に残ったこと | 主張をもう一度示す |
よく使う言葉 | 「うれしかった」「悲しかった」 | 「私は〜と考える」「なぜなら〜」 |
初稿が「便利だと思います」「みんなも持っています」と続くなら、それは感想文に近い書き方です。意見文に変えるためには、まず「私は〜と考える」という主張の一文を、書き出しにきちんと置く必要があります。
テーマの選び方と書きやすいテーマの例
課題でテーマが決められていないときは、テーマ選びが最初の関門になります。意見文は「賛成と反対に分かれる話題」でないと組み立てられません。答えが一つに決まっている話題や、好き嫌いだけで終わる話題は、主張と理由の形になりにくいからです。
選ぶときは、次の三つを順に確かめます。三つとも当てはまるテーマなら、書き進めるうちに手が止まりにくくなります。
- 賛成と反対の両方が成り立つか:どちらか一方しか言えない話題は、反論への応答が書けません。
- 自分の体験を一つ思い出せるか:教室・部活・家庭・地域のどこかに、その話題とつながる場面があるか。
- 教科書やニュースで根拠を探せるか:数や事実を一つでも足せると、主張が体験だけに寄りません。
下の表は、中学生の課題で扱いやすいテーマと、両方の立場の言い分を並べたものです。どちらの立場を選んでも書けるので、自分の体験を思い出しやすいほうを選びます。
テーマ | 賛成側の言い分 | 反対側の言い分 |
|---|---|---|
学校にスマートフォンを持ってくること | 連絡や調べ物にすぐ使える | 授業中に使ってしまう心配がある |
制服と私服のどちらがよいか | 私服なら自分で選ぶ力がつく | 制服なら朝の支度に迷わない |
宿題は必要か | 家で学ぶ習慣が身につく | 部活の後だと時間が足りない |
図書館の本を電子書籍にすること | 持ち運びやすく在庫も切れない | 紙のほうが記憶に残るという人もいる |
地域の行事に中学生が参加すること | 地域の人と関わる機会になる | 休日の予定が組みにくくなる |
部活動を週に何日行うか | 練習が多いほど上達の機会が増える | 休みが少ないと勉強や体調に響く |
逆に避けたいのは、「好きな季節はどれか」のように賛否が分かれない話題と、「いじめはよくないか」のように答えが一つに決まっている話題です。前者は理由が感想で終わり、後者は反論への応答が書けません。
書き出しの型と、やってしまいがちな書き出し
書き出しは、主張の一文から始めるのが基本です。前置きを置かずに立場を先に示すと、読み手は「この人は何を言いたいのか」を最初の一行でつかめます。型は次の三つを覚えておけば足ります。
- 立場を言い切る型:「私は、中学生がスマートフォンを学校に持ってくることに賛成する。」
- 条件をつけて示す型:「私は、使う時間と場所を決めるという条件つきで、賛成する。」
- 問いを立ててから答える型:「中学生はスマートフォンを学校に持ってくるべきだろうか。私は賛成である。」
三つのうち、いちばん短く書けるのは立場を言い切る型です。字数に余裕があるときや、反対意見が強いテーマのときは、条件をつけて示す型にすると、後半の反論への応答につなげやすくなります。
一方で、次のような書き出しは字数を使うわりに主張が伝わりません。原稿用紙の一行目で手が止まったときほど、書きやすいほうへ流れてしまいがちです。
やってしまいがちな書き出し | 何が問題か | 直した書き出し |
|---|---|---|
私は、スマートフォンについて書きます。 | テーマを繰り返しただけで立場がない | 私は、中学生のスマートフォンの持ち込みに賛成する。 |
最近、スマートフォンが話題になっています。 | ニュース紹介で本題が遠のく | 私は、使う時間を決めれば持ち込んでよいと考える。 |
スマートフォンは便利だと思います。 | 「思います」で主張が弱くなる | スマートフォンは学習の道具として役立つと考える。 |
みなさんはスマートフォンを持っていますか。 | 問いかけただけで自分の立場がない | 中学生はスマートフォンを持つべきか。私は条件つきで賛成する。 |
主張を一文に絞る
意見文を書くときに一番大事なのは、主張を一文に絞ることです。長くなったり、複数のことを言ったりすると、読み手は「結局、何を主張したいのか」が分からなくなります。主張の一文は、次の3つの条件を満たすと整います。
- 条件1:「私は〜と考える」または「〜すべきだ」の形になっている。
- 条件2:賛成か反対か、または別の立場かが、はっきり分かる。
- 条件3:余計な修飾語が入っていない(「とても」「すごく」を使わない)。
たとえば「スマートフォンは便利だと思います」という主張は、「私は、中学生がスマートフォンを学校に持ってくることに、条件つきで賛成する」のように書き直せます。「条件つき」を入れたことで、後半に「ただし、こういうルールが必要だ」と続けやすくなります。主張の一文が決まれば、意見文の半分は組み立て終わったようなものです。
主張を「言い切れる強さ」までしぼる
主張が「〜と思います」「〜だと言えるかもしれません」のように弱い言い回しになると、意見文の力は半分以下になります。中学生が意見文を書くとき、「言い切ると間違っているように見えるのではないか」と心配することがあります。けれど、意見文は「私はこう考える」という立場を示す文章なので、言い切るほうがむしろ自然です。反対意見はそのあとの「反論への応答」で扱えばよいので、主張は強く一行で書きましょう。
根拠の3種類(体験・データ・引用)
主張を支えるのが「理由」で、理由を支えるのが「根拠」です。理由は「なぜそう考えるか」という説明、根拠は「その理由を裏付ける事実」です。中学生の意見文では、根拠は次の3つに分けると整理しやすくなります。
根拠の種類 | 中身 | 中学生でも使える例 |
|---|---|---|
体験 | 自分や身近な人が経験したこと | 部活の連絡をクラスのグループで受け取った経験 |
データ | 数字や調査結果 | 教科書や信頼できる資料に載っている統計 |
引用 | 他の人や本の言葉 | 授業で扱った文章・新聞のコラム・教科書の例 |
体験は書きやすい根拠ですが、自分の話だけだと「あなたの場合はそうかもしれないけれど」と返されやすいです。データを1つだけでも組み合わせると、主張の説得力が上がります。引用を使うときは、原文を正しく書き写し、出典(どの本のどのページか)を必ず示します。引用要件(出典明示・主従関係・必然性)は意見文でも同じです。中学生の意見文では、体験1つ・データ1つ・引用は必要に応じて、というバランスが扱いやすい組み合わせです。
根拠を選ぶときの判断
根拠を集めすぎると、意見文がデータの羅列のようになります。中学生の意見文で大事なのは「根拠の多さ」ではなく「主張と根拠のつながりの強さ」です。最初に5つ並べたら、「この根拠は主張と本当につながっているか」を一つずつ確認して、主張とのつながりが強い2つに絞ります。たとえば、体験1つ(部活のグループ連絡)と、データ1つ(教科書に載っていた中学生のスマートフォン利用に関する調査)という組み合わせです。
反論への応答の入れ方
中学生の意見文で多くの人がとばしてしまうのが、「反論への応答」のパートです。反論への応答とは、自分の主張に対して反対意見を一度示し、それに対して再度自分の立場を返す書き方です。これを入れると、意見文は一気に「考えている文章」に見えます。
反対意見を一文で書く
「もちろん、〜という意見もある」「一方で、〜という考え方もあるだろう」。
その意見の言い分を短くまとめる
相手の立場をかたよりなく書く。茶化したり馬鹿にしたりしない。
それでも自分の主張を維持する理由を示す
「しかし、私は〜と考える。なぜなら〜」と続ける。
応答後にもう一度主張を強める
反論への応答の最後で主張を再確認する。
たとえば「もちろん、スマートフォンを学校に持ってくると授業中に使ってしまうのではないか、という心配もある。確かに、その心配はもっともだ。しかし、私は、使う場所と時間のルールをきちんと決めれば、その心配は減らせると考える」という反論への応答を入れます。この一段落が入るだけで、原稿全体の重さが変わり、ぐっと「考えている文章」になります。
提出前の論理チェック
書き終わった意見文は、提出前に必ず論理のチェックをします。次のチェックリストを使うと、弱い所が見つけやすくなります。
- 主張は一文で書かれているか:複数の主張が混ざっていないか確認する。
- 理由と根拠が分けて書かれているか:理由が抽象的なまま終わっていないか確認する。
- 根拠は主張とつながっているか:根拠が単独で浮いていないか確認する。
- 反論への応答が入っているか:反対意見を1つは取り上げ、それに答えているか確認する。
- 結びでもう一度主張に戻っているか:最後の段落が感想に流れていないか確認する。
- 「思います」「思いました」を多用していないか:「考える」「主張する」に置きかえる。
チェックリストに沿って読み返すと、自分の意見文の弱い所がはっきり見えてきます。たとえば最初の原稿で「思います」が何回も使われていたら、すべて「考える」に直し、「みんなも持っている」というあいまいな根拠を削り、代わりに教科書の調査結果を引用します。それだけで、原稿は字数が増えていないのに、ぐっと意見文らしくなります。
声に出して読むと論理の穴が見える
黙読では気づかない論理の穴も、声に出して読むと耳でひっかかります。文末の「思います」の繰り返し、主張と根拠のあいだの飛躍、反論への応答の弱さは、声に出すと体で違和感が出てきます。提出前の5分だけでも声に出して読むと、原稿の質が一段階上がるはずです。
意見文の各段落に使う書き出しの型
原稿用紙の前で書き出しの一文が浮かばないとき、型を持っているかどうかで時間の使い方が大きく変わります。5パートそれぞれの書き出しフレーズを、下の表にまとめました。すべてを使う必要はなく、パートごとに自分の文体に合う一つを選び、〜の部分を自分のテーマで埋めて書きます。
テンプレを使うときは、必ず一つのテーマで5パート分を通して書き、最後に声に出して読み返してみてください。テンプレを並べただけの文章は読むと違和感が出ます。型に自分の体験と言葉が乗ったとき、はじめて意見文として動き始めます。
パート | 書き出しの型 |
|---|---|
主張(考えを述べる) | 私は、〜について〜と考える。 |
主張(条件をつけて賛成する) | 私は、〜することに賛成する。ただし、〜という条件をつけたい。 |
主張(立場を示す) | 〜という議論について、私は〜という立場を取る。 |
主張(結論から述べる) | 結論から述べると、私の考えは〜である。 |
理由(理由を一つ挙げる) | なぜなら、〜だからである。 |
理由(理由を二つに分ける) | その理由は、大きく二つある。一つは〜、もう一つは〜である。 |
理由(注目した点を示す) | 私がこう考えるのは、〜という点に注目しているためである。 |
根拠(自分の経験から) | 実際に、〜という経験をしたことがある。 |
根拠(調べた資料から) | 〜(読んだ資料の名前)によると、〜という調査結果が示されている。 |
根拠(記事から) | 〜(新聞名・◯年◯月◯日)のコラムでも〜と紹介されており、〜という指摘がある。 |
根拠(身近な例から) | 身近な例として、〜という場面が挙げられる。 |
反論への応答(反対意見を認める) | もちろん、〜という意見もあるだろう。 |
反論への応答(相手の立場を理解する) | 一方で、〜と考える人もいることは理解できる。 |
反論への応答(心配に答える) | 確かに、〜という心配はもっともだ。しかし、〜と考えれば、その不安は減らせる。 |
反論への応答(反論に言い返す) | 反対の立場からは〜と言われるかもしれない。それでも私は、〜と返したい。 |
まとめ(理由をまとめる) | 以上の理由から、私はやはり〜と考える。 |
まとめ(根拠から結論へ) | これらの根拠を踏まえると、〜という結論にたどり着く。 |
まとめ(立場を保つ) | だからこそ、私は〜という立場を取り続けたい。 |
まとめ(主張を確認し直す) | 主張をもう一度確認すれば、私は〜と考える。 |
よくある遠回り|意見文づくりで起きやすい3つ
意見文を書くとき、つまずきやすい場面が3つあります。NG例とあわせて並べておきます。
- 主張を2つ書いてしまう:「スマートフォンは便利だ」「でもルールも必要だ」と2つの主張を並列に並べると、読み手から「結局どっち」と返されます。主張は一行に絞り、もう一つは反論への応答に回します。
- 根拠が体験ばかりになる:「私の場合は」が3回続くと、説得力が弱くなります。データを1つでも入れると印象が大きく変わるので、教科書の調査を必ず1つ入れます。
- 反論への応答の位置がぶれる:応答が結びの直前だけに来ると、主張の再確認が弱くなります。反論への応答は、根拠を示したあと・結びの前に置き、最後の段落で主張をもう一度示します。
よくある疑問
反対意見がうまく思いつきません。
家族や友達に「これに反対する人は何と言うと思う」と聞いてみるのが早道です。自分一人で考えるより、立場を変えた言葉が出やすくなります。
データが見つからないテーマはどうすればよいか。
教科書・学校図書館の本・新聞のコラムに載っていることが多いです。インターネットを使う場合は、誰が書いたか分かる信頼できる情報を選びます。
字数が足りないときは何を増やせばよいか。
根拠の説明(なぜその根拠が主張を支えるのか)を増やすのが一番自然です。新しい根拠を増やすより、既にある根拠を深掘りするほうが文章が安定します。
主張を途中で変えてもよいか。
書き始めて気づきがあれば、最初に戻って主張を書き直して構いません。途中で変えたまま続けると、文章全体がぐらつきます。
教科書通りに「序論・本論・結論」と書いた方がよいか。
その型でも大丈夫です。本論の中に「主張→理由→根拠→反論への応答」が入っていれば、形は自由に使えます。
意見文は「考えている人」が書く文章
意見文を書いていて見えてくるのは、意見文は「うまく書ける人」のものではなく「考えている人」のものだということです。文章のうまさより、自分の主張を一行で言い切る勇気、反対意見を一度受け止める落ち着き、根拠を選ぶときの謙虚さが、意見文の質を決めています。
明日からの一手は3つです。1つ目は、書き始める前に「私は〜と考える」を一行で紙に書くこと。2つ目は、根拠を集めすぎず、体験1つとデータ1つに絞ること。3つ目は、反論への応答を必ず一段落入れることです。意見文の型を覚えると、高校受験の作文・小論文の練習にもそのまま使えます。受験作文の組み立ては高校受験の作文と小論文の書き方 で続けて整理しているので、意見文に慣れたらそちらに進んでみてください。
