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「させていただく」の正しい使い方と過剰敬語にならない例

「させていただく」は相手の許可と自分への恩恵が揃って初めて成立する表現です。過剰敬語と判定される条件、使ってよい場面、避けたい場面、言い換えの定型を、自分のメールに今すぐ反映できる形で整理します。
目次
「ご報告させていただきます」「ご説明させていただきます」。丁寧にしようとするほど「させていただく」が増え、何をしたのかが読みにくくなる。敬語の盛りすぎでよくある現象です。
「させていただく」は、本来は相手の許可を得て、こちらが恩恵を受けるときの言葉です。許可と恩恵の2条件で判定でき、条件を外した場所を削るだけで、文章は読みやすさを取り戻します。
結論:させていただくは許可と恩恵の2条件で判定する
- 「させていただく」は相手の許可とその行為での自分の恩恵が揃ったときに、初めて自然に使える表現です。
- 通常業務の報告・説明・連絡には許可も恩恵もないため、「ご報告いたします」などで十分丁寧に伝わります。
- 事前計画より、書いたあとに全件検索して削る事後点検のほうが、読みやすさを取り戻しやすくなります。
- 置き換え先は標準形の「いたします」を基本とし、発言系の動詞は「申し上げます」で改まった印象を出します。
報告メールが読みにくくなる本当の理由
「させていただく」は、相手や第三者の許可(その行為をしてよいという同意)を得ていて、かつその行為で自分が恩恵(学びや機会など、自分にプラスになるもの)を受けるときに、初めて自然に使えます。
この二つの条件が揃わない場面で使うと、過剰敬語(必要以上に重い敬語)と受け取られやすくなります。上司から「読みにくいので削ってください」と指摘が入るのは、条件を外した使い方が積み重なっていることが原因です。
通常業務の動作には「いたします」で足りる
月次レポートに並ぶ「ご報告させていただきます」「ご説明させていただきます」は、誰かから特別な許可を受けたわけでも、自分が恩恵を受けたわけでもない通常業務の動作です。だから「ご報告いたします」「ご説明いたします」で十分丁寧に伝わります。
過剰敬語の指摘は、敬語のレベルを下げろという話ではありません。条件を満たさない場面で「させていただく」を重ねると、要点がぼやけるという構造的な問題の指摘です。
同じ「重ね」の問題は 二重敬語の例20選と見分け方 でも扱っています。
過剰と判定される3つの典型パターン
「させていただく」が過剰と見なされる場面は、よく観察すると三つの型に集約できます。第一は、相手の許可がもともと必要ない、自分側だけで完結する行為に使う型です。
「資料を作成させていただきました」は、依頼があり、かつ学習機会など明確な恩恵が伴うなら自然です。通常業務として作成しただけなら「作成しました」で足ります。
第二相手と無関係な事柄に使う
「明日休ませていただきます」は、上司の許可をこれから取るなら正しい使い方です。すでに承認済みの休暇を、関係のない取引先に改めて伝える必要は本来ありません。
第三丁寧度の重ね掛け
「ご報告させていただきたく存じます」のように敬語を多段にすると、語と語のあいだの動作が見えにくくなります。結局なにをしたいのかが伝わりにくくなります。この型の蓄積が、読みにくさの主な原因です。
使ってよい場面・避けたい場面
判断を一段速くするため、業務でよく出会う8場面を一枚の表で見渡します。許可と恩恵が揃うかを軸に、使える場面と言い換える場面を分けています。
場面 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
会議の登壇許可を得て発表 | 使える | 許可と恩恵の両方を満たす |
取引先の打合せに招かれて出席 | 使える | 招待=許可、出席=恩恵 |
自分の判断でメール送付 | 言い換え | 許可も恩恵もない |
すでに決まった休暇連絡 | 言い換え | 許可は事前承認済み |
顧客に資料を送る | 言い換え | 通常業務の送付には不要 |
面接で質問の許可を求める | 使える | 相手の許可を得る |
お祝いの席でスピーチ | 使える | 許可と恩恵の両方 |
自社の広告で「お届けさせていただきます」 | 言い換え | 広告の自社行為に過剰 |
すぐ使える言い換えテンプレ
場面 | 過剰敬語(誤) | 言い換え(正) |
|---|---|---|
送付 | 資料を送らせていただきます | 資料をお送りいたします |
報告 | ご報告させていただきます | ご報告いたします |
説明 | ご説明させていただきます | ご説明いたします |
返信 | 後ほどご返信させていただきます | 後ほどご返信いたします |
訪問 | 伺わせていただきます | 伺います/お伺いいたします |
確認 | 確認させていただきます | 確認いたします |
回答 | 回答させていただきます | 回答いたします |
連絡 | 改めてご連絡させていただきます | 改めてご連絡いたします |
正しく使える例文(許可と恩恵が揃う場合)
- 本日は、貴重なお時間をいただき登壇させていただきます。(招待=許可/登壇の機会=恩恵)
- 会場をお貸しいただき、研修を開催させていただきました。(場所の貸与=許可/開催の機会=恩恵)
- 事前にご了承いただいた通り、20日にお休みさせていただきます。(事前承認=許可/休暇の取得=恩恵)
- 面接にお呼びいただき、貴重なお話を聞かせていただきました。(招待=許可/話を伺う機会=恩恵)
NG例と改善例
実務で踏みがちな誤用と、その直し方を一覧で見ていきます。自分のメールに当てはまっていないか点検してください。
NG例 | 問題点 | 改善例 |
|---|---|---|
本日のアジェンダを共有させていただきます | 通常業務に過剰 | 本日のアジェンダを共有いたします |
担当を変更させていただきます | 一方的な変更に「させていただく」は不自然 | 担当を変更いたします |
見積書を送付させていただきました | 送付は通常業務 | 見積書をお送りいたしました |
弊社からのご提案をご報告させていただきたく存じます | 敬語の多段重ね | 弊社からのご提案をご報告いたします |
商品をお届けさせていただきます | 広告での自社行為に過剰 | 商品をお届けいたします |
失敗集:「させていただく」を盛りすぎた4つ
「させていただく」の使いすぎは、意外と自分では気づきにくいものです。よくある4パターンを整理します。
月次レポートで「させていただく」を5回入れた
重要度の高い報告書で丁寧さを意識するあまり、「ご報告させていただきます」「ご共有させていただきます」が5回並ぶケースがあります。上長から「読みにくいので削ってください」と差し戻されます。許可と恩恵のどちらも満たさない箇所まで盛っていることが原因です。提出前に「させていただく」の件数を数える手順を入れると防げます。
「拝見させていただきました」と書いた
相手の資料に対する返信で「拝見させていただきました」と書くと、「拝見」自体に謙譲が含まれているため二重の遠慮になります。上司や先輩から「拝見しました」で十分と指摘されることがあります。短くするだけで読みやすさが段違いに改善します。
面接や商談で「させていただく」を連発した
相手に自社のサービスや取り組みを説明する場面で「ご説明させていただきます」「お話させていただきます」を続けると、「ずいぶん遠慮されますね」と相手に感じさせることがあります。許可は得ていても、連発は避けるのが基本です。冒頭1回だけにとどめる運用がすっきりします。
個人で改善しても社内テンプレを更新しなかった
自分のメールを修正するところまで進めても、社内のメールテンプレや定型文を更新しないと、チームメンバーが同じ表現を使い続けます。レビューコメントを繰り返し書く手間が発生します。棚卸し結果を社内ガイドラインに反映すると、チーム全体の出現数が落ち着きます。
使うか迷ったら3秒で判別
書いた直後にその場で判定できるよう、3秒で通せる質問列を整理します。上から順に当てはめれば、削るべき「させていただく」が見えてきます。
- ①相手の許可・依頼があるか。なければ「させていただく」は不要です。
- ②自分が恩恵を受けるか。通常業務なら恩恵にあたりません。
- ③一文に他の敬語が重なっていないか。重なっていたら片方を削ります。
社内ルール化の3ステップ
「させていただく」の受け取られ方は、業界や組織風土によって幅があります。職場ごとに許容度が違うため、個人の感覚で揃えるより、社内のライティング・ガイドラインに整理しておくのが現実的です。
新人研修と上長レビューの両輪で運用すれば、3か月程度でチーム全体の表現が安定します。
過去レポートの棚卸しが運用の起点になる
取り組みの起点として有効なのは、過去半年分の月次レポートや提案書から「させていただく」を全件抽出し、許可と恩恵の2条件で仕分けする棚卸しです。条件を満たすのは全体の2割ほどにとどまるケースが多く見られます。
残り8割は「いたします」「申し上げます」で十分置き換えられます。この棚卸し結果を社内Wikiに貼り、レビュー観点として表に落とし込む流れが、下表のステップです。
ステップ | 内容 | 実施頻度 |
|---|---|---|
1. 棚卸し | メールテンプレ・提案書から「させていただく」を抽出 | 初回のみ |
2. 判断基準の明文化 | 使ってよい例/避ける例を社内ガイドラインに一覧化 | 初回+年1回更新 |
3. レビュー運用 | 上長レビュー時に過剰敬語チェックを項目化 | 案件ごと |
4. 教育 | 新人研修で許可と恩恵の2条件を共有 | 入社時・年1回 |
5. 定型文の整備 | 「いたします」「申し上げます」テンプレを準備 | 随時 |
6. 振り返り | 半年ごとに見直し、頻出NG例を更新 | 半期ごと |
ガイドライン化から3か月運用すると、「させていただく」の出現数が初月の5回前後から平均1〜2回まで下がります。上長からの「読みやすくなった」というフィードバックは、ルール化の効果が数字の外でも届いたサインです。
「いたします」「申し上げます」との使い分け
「させていただく」を削った後、置き換え先として「いたします」「申し上げます」をどう選ぶかを整理すると、文章の調子が自然に整います。「いたします」は謙譲語の標準形で、ほぼすべての動詞に使えます。
「申し上げます」は発言系動詞に限定する
「申し上げます」は「言う」「お願いする」「お祈りする」など発言系の動詞に限定し、改まった印象を出したいときに用います。
迷ったら、敬意の高さを上げたい場面では「申し上げます」、日常業務では「いたします」と覚えておけば失敗しません。
動詞 | させていただく | いたします | 申し上げます |
|---|---|---|---|
送る | 送らせていただきます | お送りいたします | — |
報告する | ご報告させていただきます | ご報告いたします | ご報告申し上げます |
お願いする | お願いさせていただきます | お願いいたします | お願い申し上げます |
お祈りする | — | お祈りいたします | お祈り申し上げます |
説明する | ご説明させていただきます | ご説明いたします | — |
返事する | お返事させていただきます | お返事いたします | — |
よくある疑問
「対応させていただきます」は誤りか。
通常の対応依頼には「対応いたします」で十分です。相手から特別なお願いがあり、自分が学びや経験などの恩恵を得て対応する場面なら自然です。
面接で「質問させていただいてもよろしいですか」と言うのは。
相手の許可を求める場面なので適切です。「質問してもよろしいでしょうか」と短くしても問題ありません。
自然に使える条件をひとことで言うと。
相手の許可と自分への恩恵の2条件が揃うときが基本です。条件を満たさない使い方は避けたほうが無難です。
過剰敬語の指摘を受けやすい職場では。
「いたします」「申し上げます」「お送りします」など、選択肢を持って書き分ける癖をつけると過剰敬語が減ります。
「書いたあとに削る」が一番うまくいく
「させていただく」は書く前に判断するより、書いたあとに削るほうが現実的です。書いている最中はどうしても丁寧に向かう力が働き、気がつくと並んでしまうものです。
「丁寧さは事前計画ではなく事後点検でしか整わない」という感覚を持っておくと、提出前の検索ひとつで読みやすさが大きく変わります。
明日からの一手は3つだけです。下のどれも30秒あれば回せます。
- ①書き終えたら送信前に「させていただく」を全件検索する。
- ②ヒットした箇所を「いたします」「申し上げます」「お送りします」に置き換えて意味が通るか試す。
- ③意味が通るなら、迷わず短いほうを残す。
営業職なら提案書の表紙文の「ご報告させていただきたく存じます」を「ご報告いたします」へ、人事なら月次レポートの定型の「ご共有させていただきます」を「ご共有いたします」へ、販促担当なら取引先への案内文の「お届けさせていただきます」を「お届けいたします」へ、それぞれ第一の点検対象にしてください。
返事や受け止めの語の選び方が気になる場合は、「了解しました」が失礼になる場面と正しい返事の例 と組み合わせると、「承知しました+いたします」のような自然な対が見えてきます。
