1on1の進め方と部下の本音を引き出すマネージャーの質問例

1on1ミーティングで上司が部下の話を聞きながらメモを取るモノクロ漫画風イラスト

1on1は「上司が話す場」ではなく「部下が話す場」です。本音を引き出す質問の型、テーマ別アジェンダ、傾聴と発話の比率、評価面談との分離までを、月一回30分で続けられる運営の手順でまとめます。

目次

  1. 結論:主役は部下。上司は傾聴8・発話2に徹する
  2. そのまま使える質問例7つ
  3. 何を・どの頻度で話すか
  4. テーマ|4系統を月単位で回す
  5. 頻度|相手の自走度に合わせて間隔を変える
  6. 「特に問題ないです」を越える質問の作り方
  7. 開放的|はい・いいえで終わらせない
  8. 具体的|対象を絞って一歩入り込む
  9. 未来志向|原因探しより次の一歩へ
  10. 30分をどう配分するか
  11. やりがちなNGと直し方
  12. 初年度にやらかした1on1の失敗4つ
  13. 失敗1|初回を「最近どう?」だけで20分で切り上げた
  14. 失敗2|話を3秒で遮って解決策をかぶせた
  15. 失敗3|前回の話を忘れて信頼を欠いた
  16. 失敗4|ただの進捗報告会になっていた
  17. なぜ部下は黙ってしまうのか
  18. 当日より、前後の運用で質が決まる
  19. メンバーごとに型を微調整する
  20. よくある疑問
  21. 今日からのチェックリスト
  22. まとめ|対話の量が、信頼の厚みに変わる

1on1(上司と部下が1対1で行う定期的な面談)で「最近どう?」と聞いても、返ってくるのは「特に問題ないです」「大丈夫です」だけ。沈黙が気まずくて、つい業務連絡や進捗確認で時間が埋まってしまう。これは最初の1on1でいちばん起きやすいつまずきです。

原因は質問の言い回しよりも、面談の設計にあります。1on1は「上司が用件を伝える場」ではなく「部下が自分の考えを言葉にする場」です。場の主役を入れ替えるだけで、同じ30分でも部下から返ってくる言葉が変わります。

結論:主役は部下。上司は傾聴8・発話2に徹する

  • 1on1は上司の用件や進捗確認の場ではなく、部下が抱えていることを言葉にして整える場です。
  • 会話量の目安は傾聴8・発話2で、30分なら上司が話すのはおよそ6分にとどめます。
  • 質問は開放的・具体的・未来志向の順に組み立て、はい・いいえで終わらせず深掘りします。
  • 評価面談とは場を明確に分け、最後に次のアクションと次回日程を毎回確認して締めます。

そのまま使える質問例7つ

最初の1on1から終盤まで使い回せる質問を挙げます。はい・いいえで終わらせず、開放的に始めて具体に絞り、未来へ向ける順で組み立てます。

  1. ①開放的な始まり:最近どう? 業務やチームのことで気になっていることはある?
  2. ②具体的な深掘り:先週の◯◯について、もう少し聞かせてもらえる?
  3. ③心情に寄せる:そのとき、どんな気持ちだった?
  4. ④未来志向:どうなったら理想? そのために必要なことは?
  5. ⑤上司への期待:私のサポートで足りないこと、もっと欲しいことはある?
  6. ⑥キャリア:3年後、どんな仕事をしていたい?
  7. ⑦難所の確認:いま一番ストレスを感じていることは?

何を・どの頻度で話すか

テーマ4系統を月単位で回す

1on1のテーマは「短期の業務」「中期のキャリア(仕事の道のり)」「人間関係」「私的な気がかり」の4系統に分かれます。毎回すべてではなく、月単位で順に回すのが現実的です。

テーマ

内容

質問例

短期業務

今週の悩み・困りごと

今、業務で一番気になっていることは何ですか

中期キャリア

半年〜2年の展望

この半年でやりたいことは何ですか

人間関係

チーム・他部署との関係

チーム内で気になることはありますか

私的な気がかり

仕事に影響する個人的事情

体調や生活面で気になることはありますか

上司への要望

マネジメントへの期待

私のサポートで助かること・足りないことは

頻度相手の自走度に合わせて間隔を変える

頻度については、週1で30分、隔週で45分、月1で60分のいずれかが標準的な型になります。新人や入社直後のメンバーには頻度を高めに、自走できているベテランには間隔を長めに、と相手に合わせて微調整します。テーマと頻度を最初に共有しておくと、部下も「次は何の話をしようか」と準備しやすくなります。

「特に問題ないです」を越える質問の作り方

先ほどの7つは、なぜあの形なのか。良い質問は「開放的」「具体的」「未来志向」の3要素でできています。

開放的はい・いいえで終わらせない

はい・いいえで終わらない聞き方です。「困ってない?」では「ないです」で閉じます。「最近どう?」「何が気になっている?」と開いておくと、相手は自分のペースで言葉を選べます。

具体的対象を絞って一歩入り込む

対象を絞ります。「最近どう?」だけでは漠然とするので、「先週の◯◯案件の手応えはどうだった?」と一歩入ります。期間・案件・場面のどれか一つを押さえると、相手も記憶を呼び出しやすくなります。

未来志向原因探しより次の一歩へ

過去の原因探しに偏らないことです。「なぜできなかったのか」ばかりだと取り調べになります。「どうなれば理想?」「そのために必要なことは?」と未来へ視線をずらします。理由を問うと身構える相手には、「そのとき、どんな気持ちだった?」と心情に置き換えると話しやすくなります。

30分をどう配分するか

30分は配分を決めておくと安定します。漫然と使うと雑談で終わったり、終盤に重い話が出て消化不良になったりします。

  1. ①開始(5分):最近の状況を開放的に問う「最近どう?」
  2. ②今週・今月のテーマ(15分):部下が事前に準備したテーマを深掘り
  3. ③上司への期待・フィードバック(5分):上司の動きへの要望
  4. ④次のアクション(5分):今日の対話で生まれた次の一歩
  5. ⑤締め:感謝と次回の予告

配分は目安で、流れに応じて伸び縮みさせて構いません。ただし「次のアクション」と「次回の予告」だけは毎回最後に確認します。これがないと「話して気持ちよくなって終わり」になりがちです。

やりがちなNGと直し方

質問の型を覚えても、運び方を誤ると本音は出ません。最初の数か月でやりがちな5つを、直し方と並べます。

NGな運び

何が問題なのか

直し方

上司が業務指示で時間を埋める

対話ではなく業務会議になってしまう

指示は別の場で伝え、1on1は対話に専念する

評価面談と混同する

評価される空気で本音が出にくくなる

評価は別の場で行い、1on1は安心して話せる場だと明示する

部下が話さないので質問を畳みかける

取り調べのように感じてしまう

沈黙を恐れず待つ。質問は1つずつ投げる

解決策をすぐに提示する

部下が考える時間を奪ってしまう

まず聞いて受け止める。解決の話は最後に置く

上司の自慢話・武勇伝で埋める

部下の時間を奪い、対話が止まる

上司の話は最小限にして、部下の話を引き出す

初年度にやらかした1on1の失敗4つ

初めてマネージャーになった年の1on1では、気まずい30分の連続になりがちです。よくある4つのパターンを並べます。

失敗1初回を「最近どう?」だけで20分で切り上げた

初回の1on1で「最近どう?」に「特に問題ないです」しか返らず、沈黙を埋めようと業務の話を振ったら自分が話し続け、30分の予定が20分で終了してしまうケースです。アジェンダを事前に渡していない準備不足が主因で、同じ失敗を繰り返しやすい点に注意が必要です。

失敗2話を3秒で遮って解決策をかぶせた

部下が顧客対応の悩みを話し始めた瞬間に「それはこうすればいい」と即答してしまい、相手が「はい」と短く返したきり本題に戻れないパターンです。相談したかった本筋が別にある場合でも、早期に解決策を出すと話が閉じてしまいます。まず黙って受け止める時間が要ります。

失敗3前回の話を忘れて信頼を欠いた

数か月続けた1on1で、前回「家族の介護で午後にバタつく」と聞いた話を翌月すっかり忘れ、「最近どう?」とだけ聞いて部下の表情が曇るケースです。終了直後に3行メモを残し、次回の冒頭で前回の話題に触れる運用を入れると防げます。

失敗4ただの進捗報告会になっていた

年度後半、忙しさで1on1がほぼ「進捗確認」になり、部下から「これ、ふつうの定例と何が違うんでしょう」と静かに聞かれて言葉に詰まるパターンです。月1回はキャリアか人間関係にテーマを寄せると決め、カレンダーにそのテーマ名を入れておくと防げます。

なぜ部下は黙ってしまうのか

そもそも、なぜ部下は「特に問題ないです」しか言わないのでしょうか。一つは信頼関係がまだ薄いから。週の半分も話さない上司に急に「悩みは?」と聞かれても、評価される側として答えを間違えたくない心理が働きます。

もう一つは「場の設計」です。アジェンダを事前に渡さず、質問も漠然としていれば、何を話せばよいか分かりません。沈黙の責任の多くは、じつは上司側の準備不足にあります。だからこそ、この場の主役を部下に置き、上司は聞き役にまわる前提が要るのです。

当日より、前後の運用で質が決まる

1on1の質は、30分の会話そのものより前後の運用で決まります。前日に部下からアジェンダを最低3項目もらい、上司は前回メモで未消化の論点を確認。当日は対話に集中し、共有ドキュメント(共同で編集できる議事メモ)にその場で書き込みます。

直後に次のアクションを記録し、月末に1か月分を振り返り、半年に一度棚卸しする。この流れがあると、1on1は単発のイベントではなく、部下の成長を写すアルバムのように育ちます。

ログが残っているからこそ、半年後の評価面談で「あのとき◯◯と言っていたよね」と当時の言葉を引いて振り返れます。記憶ではなく記録に基づく対話は、部下の納得感も大きく変わります。

工程

やること

所要

前日

部下からアジェンダ提出

5分(部下作成)

前日

上司は前回のログを見直し

5分

当日

対話に集中、共有ドキュメントにメモ

30〜60分

直後

次のアクションを記録

5分

月末

1か月分のログを振り返り

15分

半年

ログ全体を棚卸し、評価に反映

30分

メンバーごとに型を微調整する

すべての部下に同じ1on1を当てはめる必要はありません。新人は短く頻繁に、中堅は隔週で深く、リーダー候補は月1でキャリア中心に、と特性に合わせて変えます。

特に内向的なメンバーには、当日いきなり口頭で問うより、事前にアジェンダを文字で送ってもらうとよく機能します。型は持ちつつ、相手によって細部を変える。ここにマネージャーの腕が出ます。

メンバー特性

頻度・時間

主なテーマ

事前準備

新人

週1×30分

業務理解・人間関係

上司主導でアジェンダ

若手

週1×30分

成長機会・スキル

部下主導でアジェンダ

中堅

隔週×45分

キャリア・案件深掘り

部下主導

リーダー候補

月1×60分

キャリア・組織観

部下主導+上司テーマ

ベテラン

隔週〜月1×45分

組織課題・後進育成

対等な対話

内向的

事前文字共有を厚く

心理的安全重視

チャット併用

よくある疑問

部下が話してくれない場合は。

関係を作っている最中は、なかなか話してもらえないのが普通です。3〜6か月ほど続けると、少しずつ話してくれるようになっていきます。

業務の話に終始してしまう。

アジェンダに「キャリア」「人間関係」のテーマを月1回入れて、意識的に切り替えるようにします。

1on1は何分が適切か。

30〜60分が一般的です。短すぎると深まりにくく、長すぎるとお互いの負担になります。

オンラインで実施するときのコツは。

ビデオオンを基本にする、雑談から入る、メモを取ることを最初に伝える、といった工夫で関係性を作っていきます。

今日からのチェックリスト

  • アジェンダは部下に事前に準備してもらう運用に切り替える
  • 上司の発話比率を意識する(目安は2割以下)
  • 評価面談と1on1の場を明確に分ける
  • 質問は開放的→具体的→未来志向の順で組み立てる
  • 解決策をすぐに出さず、まず受け止める
  • 次のアクションと次回日程を必ず確認する

まとめ|対話の量が、信頼の厚みに変わる

気まずい初回から3か月ほど続けると、部下との1on1は少しずつ変わっていきます。本音が言葉になり、迷いが整理され、次の一歩が決まっていく。1on1が機能し始めるまでに要する時間軸を知っておくと、焦らず続けられます。

明日の1on1の前に、まずは部下にアジェンダ準備をお願いしてみてください。そして今日のうちに、最近の自分の1on1運営を振り返り、発話比率と質問の型を点検しておきましょう。「対話の量」が「信頼の厚み」に変わっていく感覚を、半年後に手にしているはずです。

営業マネジメントなら案件レビューと1on1を必ず分け、店舗マネジメントならシフトや数字の話を別の場に切り出し、管理職全般としてはメンバーごとに頻度と粒度を変える、と職種で型の微調整が変わります。

フィードバックの作法は 管理職のフィードバック と地続きです。1on1と合わせて整えておくと、対話の場としての厚みが一段変わってきます。